「青春アカペラ甲子園 全国ハモネプリーグ」

コメントでご意見いただきましたので、ちょっとまとめ直してみました。
〔加筆・修正〕2009/09/28

アカペラ界における、この番組の功罪って正確な分析は難しいのですが、私は当初の役目は終えたと思っています。
一番の功績は、アカペラという音楽スタイルを一般に普及させたことでしょう。もちろんハモネプ以前でも、アカペラバンドのファンは存在したし、演奏活動している人たちも存在しましたが、今のように大学で100名を越えるようなアカペラサークルが存在するようになったのは、番組が一大ムーブメントを起こした21世紀以降です。
逆に罪過は、アカペラは多用な演奏スタイルがあるのに、ハモネプのそれがスタンダードかのような一般化をしてしまったこと、『結果よりも活動することに意義がある』みたいな感情論を「音楽活動」のテーマにしてしまったことだと思います。テレビ的に分かりやすい要素に特化し過ぎたんですよね。
最近はその傾向が顕著で、選曲は盛り上がるノリ重視の曲か感動しやすいバラード中心。それに、多くの視聴者が感情移入しやすいようなエピソードを盛り込んで、泣きの要素を入れる。ハモネプは演奏の優劣を競うアカペラコンテストじゃなくて、「青春アカペラ甲子園 全国ハモネプリーグ」という音楽バラエティですから。
もちろん、この番組のメインターゲットの高校・大学生には「結果よりも過程が大事」ってな学校教育的な要素が受けることは、ある程度は許容できます。「やってる自分達が感動できれば、観客にも伝わるはず」という勘違いは誰もが通る道で、いずれは音楽的なアプローチに何が必要かが見えてくるでしょうし、逆にそれに気づかない「ゆとりアカペラー」は、就職してからの様々な制約とともに演奏活動は止めていくでしょうから…。(現実を知るって感じでしょうか)

番組を見ていたら、アカペラファンにとって疑問や不満に思うことが多いんですが、番組の本質は今後も変わらないでしょうね。まず、出演者であり、視聴者でもある高校生や大学生は次から次へと上がってくるから、ハモネプ的なものを卒業した人の変わりはいくらでもいるし、それに、携わっている個人の考えはともかく、番組というくくりでみれば、金を出してるスポンサーがお客様であって、そこそこ視聴率があればいいわけでしょ?多くの視聴者は、日テレ「1億人の大質問!?笑ってコラえて!」でやってたような、吹奏楽スペシャルとか、新体操スペシャルとか、TBS「学校へ行こう」の合唱みたいに、盛り上がって感動できそうなバラエティが好きなのであって、ただ歌ってるような番組じゃチャンネル変えられちゃうって理論なんだろうな。

というような、考えをふまえて感想を書いたのですが、前置きが長くなりました。やっと本編を補足しつつ書き直します。

前回が4月だから半年経ってないんですねー。(http://d.hatena.ne.jp/maru2004/20090421/p2:TITLE=前回の感想)
一言で言うと、今回はつまらんかった。ビデオに撮っていたので初回はさらっと、もう一度じっくりと聴いてみたけど、まともにハモってるほうが少なかったですよね。
制作サイドが、ジュブナイル、A-Z、AS★KNOWの3バンドに絞ってたのはバレバレで、番組の流れはジュブナイルってな感じだったんだけど、A-Zに決まってちょっと意外。うーん、いかにもなゴールデンの番組的な流れって視聴者も厭きてるような気がするけど、これいつまでやるんだろう?
そもそも、リーグ戦で点数もつけているのに、放送上の演奏時間が短すぎる!最低でも3〜4分は演奏してくれないと全く出来の良し悪しが分からない。それに、ものまね番組でよくある、AメロからいきなりBメロ→サビとか、ブリッジの後にくるような転調させた大サビとか、あれは現地ではちゃんと演奏されたのか?それともアレンジの時点でああなってるのか?まあ、編集でも実際に演奏がそうなっててもどっちでもセンスないのは同じだけど、あれを指示しているのは制作サイドなんでしょう?長いと飽きてチャンネル変えられるからか?

各バンドの演奏で、個人的に良かったと思うのは、「夏祭り」を歌った、ちゅララ♪。事前に番組サイトで予選?の演奏がUPされていたのですが、歌は素直だったし聞いてて恥ずかしくもなかったので期待していた通り良かったです。それから、「フレンジャー」のThe Companyはダンスの振付に使われていた「はんにゃ」の「ずくだんずんぶんぐんゲーム」とか、馬鹿っぽくて楽しかった。おてん「男と女のラブゲーム」は、司会や審査員がリアルタイムで知っている曲だったこともあって反応が良かったですが、女声リードの音が全然合ってなかったのが残念、コーラスもバラバラだし、あれをぴったりはめたら男声リードのふざけっぷりが引き立ったと思う。ムード歌謡っぽいリードがとても良かったから、音もピッタリ、大真面目でふざけてたら最高だったと思う。その他は印象だけザックリですが、とろけるちーずの「ハリケーン」は本家を聞きたくなりました。ダイナモ「ガッツだぜ!!」、もののふultra soul」とか、思ったよりも評価されなかったのは気の毒。決勝に進めなかったけれど面白いと思ったバンドはそこそこあったように思う。
それから、アレンジ面では、移調して変な感じになってるのがやっぱり多かった。前も書きましたが、特に槇原敬之は原曲のキーの印象が強いので、歌い易いキーへ移調しただけだと凄く気持ち悪く感じます。それから、エンディングを安直にアレンジするのって流行ってるんでしょうか?意味無くrit.して終わるとか、逆にallarg.だったり、メジャー音に開放するとか、演奏の終わりって曲の印象を左右することが多いので、よほど考えないと安い印象になってしまいます。それと、μ(ミュー)の「真夏の果実」は飲んでたお茶がファウンテン!するほどビックリしました。放送上は唐突に高音転調をしたように見えましたが、実際の演奏でもああだったんでしょうか?あの転調部分の指示が番組側だったのか、バンド側の希望だったのか分かりませんが、90秒くらいの枠だとどうやっても転調は唐突な印象が残ります。YoutubeにUPされてた彼女らの練習音源を見ると2段階で転調しているような曲がありましたが転調そのものが好きなんでしょうか?リードで派手さやテクニックをアピールするのもいいけど、コーラスアレンジの手法って沢山あるから、もっと人数を生かしたハーモニーの厚みが出るようなものを歌った方が良さが伝わると思うんですよね。You Raise Me Upがレパートリーみたいですが、ケルティックウーマンのアレンジとか良いのでは?
ただ、番組側はセレブ合唱バンド?みたいな芸風を要求してるみたいだから普通じゃダメなんでしょうか?

それと、各バンドのリードに多かったんですが、顔芸禁止希望!
「音はともかく、キモチは伝わった」とか言うアホなアカペラファンがいるから、ややこしいんですが、陶酔し過ぎは演奏の印象にとってマイナスです。

うーむ、番組的には絶対に無理だろうけど、予選を壁の向こうで歌だけ歌わせて審査するとかやったら、もっと音楽的なバンドが進めると思うなあ。テレビじゃ無理ですけどねー。

とりあえず、激しく的外れな鉄也イラネー、番組で一番ダメなのは演奏する側じゃなくて審査員だという現実をどうにかすべきだと思うなー。魔裟斗は何しに来たんだ?それに、審査の合間にやってたプロバンドもさ、ええーーー!てな感じだったもん。どこまで劣化させれば気が済むんだ?

ということで、ダメだなあと思いながら、ぬるーく番組の行く末を見守りたいと思います。