【2010年01月11日(月・祝)】スペクタクル・ミュージカル・アドベンチャー『パイレート・クィーン』@梅田芸術劇場

maru20042010-01-11


行って来ましたhttp://www.umegei.com/pirate_queen/:TITLE=パイレート・クィーン。年末までは帝国劇場で公演していて、大阪は10日ほどですが、随分前から大阪の公演スケジュールは発表されていて、キャストも東宝ミュージカルではお馴染みの顔。
公演チケットは梅田芸術劇場の会員先行で取ったものの、大千秋楽とは言え3階B席しか当たらず、売り飛ばして他の公演を観ようかと思っていました。が、なんだかチケット売れてないようで、たしか1月3日の公演でも1階6列目くらいのセンターが残っていたような気がします。前評判はあまり気にしないようにしていますが、賛否両論という感じだったので、今ひとつテンションがあがらないまま公演日が来てしまいました。

以下ネタバレあり


3階席で観るのは初演東宝エリザ以来?でしょうか、あまりにも位置が高くて遠かった印象があったんですが、結構良かったですよ。3階3列サブセンターは目の前に天井のシャンデリアがありますが、椅子は1階席よりもゆったりしてる気がしました。気のせいかなあ?左右の間隔にゆとりがあるなあ、と思ったんだけど…。
それから、見やすいと感じたのは舞台セットの配置のせいもあって、回転盆の上は円形の八百屋舞台で、上手下手への通路と奥のホリゾントへも動線があり、奥の舞台上にオーケストラがいました。丸い舞台の左右に長方形に通路のようになっていて、場面によっては客席側の円形部分を埋めるように舞台がスライドして、段差の無い舞台になります。例えば、帆船のシーンだったら円形舞台の傾斜が上がっている方に舳先のような部分セットを置いて、上から帆が下がってきて船に見えるということです。例えば、イギリスのエリザベスが出ている場面では、後方は幕で隠して、幕前にスライドステージを足して演技するなど、大掛かりではないですが効果的なセットでした。
ストーリーは、史実に基づいた創作で、イングランド統治時代のアイルランドの抵抗に恋愛ネタを絡めてみました、というもの。簡単に説明しちゃいましょう。
部族間の争いの絶えないアイルランドのオマリー一族の族長・ドゥブダラ(今井清隆)の娘グレイス・オマリー(保坂知寿)が主役。船には女性を乗せることを忌み嫌うため、グレースは軍船には乗れないのですが少年に変装してこっそり乗り込みます。ちょうどイングランド船艦との戦いが起こって、天候も荒れて船は沈没寸前。そこで彼女は窮地を救い認められて、海の女王としての教育を受ける。(ご都合主義な展開ですけどね…)ちなみに、山口祐一郎さんはグレイスの恋人ティアナン役ですが、序盤はたいした絡みがありません。ヘタレなでかい男という感じ。
場面は変わり、イギリスでは女王エリザベス一世涼風真世)が即位しており、彼女は女であることで国を治める資質が無いと思われることを嫌い、女王としての権力を強めようと振舞っていた。まあ、ここはグレースとエリザベスの対比のためなんだろうけど、ジェンダー論ぽい台詞回しが多くてちょっと違和感がありました。アイルランドをなかなか統治できないことに苛立ちを感じるエリザベスはビンガム卿(石川禅)をアイルランド総督に任命して統治に向かわせるのですが、石川禅さんの演技がなかなか面白かったです。野心家だが抜けていて運命に翻弄される感じってのはステレオタイプな役だけどね…。
そして、その頃アイルランドでは、部族間の紛争を解決してイングランドに抵抗しようと、オマリー一族が仇敵のオフラハティ一族の結婚によって調停を図ろうとし、グレイスはオフラハティのダメ息子ドーナル(宮川浩)との婚礼を受け入れ、ティアナンへの恋心を諦めて、一族のため結婚することに…。船を下り妻としての生活を甘んじて受け入れたグレイスだったが、父である族長・ドゥブダラが瀕死の重傷である連絡が届き、父のもとに戻るとドゥブダラは族長にグレイスを指名して亡くなる。やがてグレイスは身ごもり、船上で出産するが、イングランド戦艦の襲撃を受け、戦いに巻き込まれてしまう。劣勢となり、降伏しようとするドーナルに対し、出産直後のグレイスは剣を持ち立ち上がり、士気が高まった軍は劣勢をはねのけてイングランド軍を撃退する。アイルランドのしきたりでは、三年と一日を過ごせば永遠の夫婦となるが、グレイスはその前にドーナルとの決別を決意する。三行半を突きつけられ、子供も奪われたドーナルは、敵であるビンガム卿に取り入り、グレイスを騙してイングランドに捕獲させてしまう。子供はすんでのところでティアナンが救出するが、グレイスは捕虜として幽閉されてしまう。(哀れドーナルはティアナンに討たれてジ・エンド)
グレイスが囚われて7年の月日が経ち、多くのアイルランドの部族はイングランドに降伏した。ティアナンはビンガム卿に、自分を身代わりにグレイスを釈放し、子供と合わせて欲しいと懇願する。グレイスが囚われの身になっても絶望していない理由が分かったエリザベスは、ティアナンの願いを叶え、グレイスの代りに幽閉の身となる。解放され、息子と故郷に帰ったグレイスは祖国の荒廃とイングランドの圧制に苦しむ現状を知り、再び船に乗りイギリスに向かう。それはイングランドへの謀反ともいえる行動で、死を覚悟してのことだったが、共通言語を持たないグレイスとエリザベスはラテン語で会話をし、お互いを理解し合い、エリザベスはグレイスの船に保証を与えて、ティアナンとの帰郷を許す。そしてアイルランドへの不当な扱いがエリザベスに知るところとなったビンガム卿はエリザベスによりロンドン塔へ送られる。
ということで、「男」「女」ってのがあまりにも出しすぎた脚本はちょっとどうなんだろう、という感じ。曲はそこそこ感動できたけれど、これなら東宝ミュージカルの黒歴史「MA(マリーアントワネット)」の方がよほど良いと思いました。アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルクてのは『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』の大ヒットコンビだけど、これははっきり言って駄作だと思う。だって、観劇後に頭の中をグルグル回って残るナンバーが無いんだもん。まあ、脚本と作曲は違うけれど、MAはミヒャエル・クンツェとシルヴェスター・リーヴァイのコンビの「100万のキャンドル」とか「すべてがあなたに」とか良かったですよね、あれは演出がダメだったのと、キャスティングやいろいろと東宝の失敗でしょうね。
さて、MAは置いといて、歌はどうだったかと言うと、保坂知寿さんはアイルランドの場面でほぼ出ずっぱりでしたが、歌はとても聴きやすくて歌詞も明瞭でした。涼風真世さんはこのところ女王ばっかりですが、キーが高い曲が多いためか、ちょっときつかったように思います。閣下は、まあいつも通りの歌とダンスでしたが、終盤グレイスの解放を願うナンバーは、ありゃ何でしょう?まあいつものウィスパー歌唱なんだけど、ほんとに何を言ってるのか全く分からず唖然。
全体の感想としては、B席5000円で十分だった。という感じ。アイリッシュダンスが目玉で、ポイントとなる場面に挿入されていて、アイルランドから来日した4名などは圧巻で、その感動はあるけれど、東宝ミュージカルスターとの乖離が激しすぎて、別物の公演みたいでした。それと演出、あのグレイスとティアナンの再会シーンて、あきらかに四季のJCSでしょ?全体的にあんまり東宝ミュージカルっぽい雰囲気がなくて、四季の公演を見ているような感覚でした。これがさ、若手スターが主役だったら普通に楽しめたんだろうけど、実年齢が40後半から50代ばっかりってのはさすがに無理があると思う。東宝も、看板スターだけでは集客できない時代になってることに気づいて考えたほうがいいんじゃないかなあ?
ファンなので観には行くけれど、ガラガラ、投売り、リピーター割引が当たり前になっている現状だと、定価で会員先行で買って、割り当てられたのが屑席ってのがとても不満。だから先行予約で買うの止めたけど…。ちなみに、この日もいつも通り、中二階ロビーでは売れ残り公演の割引販売と、レベッカの先行販売をやってました。レベッカは割引無しでした。ちなみにエリザベートなどと同じ座席配置で、1階〜2階前方までがS席13000円、2階後方〜3階前方がA席9000円、B席4000円は3階後方のみという超ボッタクリ価格設定。どうせなら価格設定を四季を見習って欲しいなあ。それに売ってたのはS席は1階は皆無で2階ばっかりだし、この公演はそこそこ売れると踏んで強気なのか、もう分からん。でも、週末は売れても、どうせ平日マチネとか投売りなんでしょう?定価で買う客の購買意識が下がると思うんだけどなあ…。
ということで、次はレベッカを観に行きます。しかし、ダンバース役を涼風真世ってのはどうなの?どんな役作りになるのか想像できるだけに…、うーむ。ところで、クリエから帝劇版への変更ってのは、マンダレイが炎に崩れるシーンを再現するんでしょうか?今回はドゥブダラの葬送シーンで本物の火を使ってたけど、消防法の絡みや、劇場の問題もあって難しいのかなあ?あの盆回しで階段がせり上がるシーンや、衝撃のフィナーレはオリジナルを是非とも再現して欲しいです。