【2010年04月17日(土)】「死なないための葬送…荒川修作初期作品展」&「ルノワール展」@国立国際美術館

初日にぶらりと行ってみました。
個人的な目的は荒川修作のほうで、講演があったのでそれを聴いてから鑑賞することにしましたが、これが非常に興味深くて面白かった。

「現代美術の作品を残す意味と方法−荒川修作砂の器』とその周辺の場合」
講師: 森田恒之 (国立民族学博物館名誉教授)
日時: 4月17日 (土) 午後2時〜
会場: B1階講堂

1961年12月にニューヨークに渡る荒川修作は、渡米以前に棺桶型の立体作品を多く制作しました。木箱の中には、木屑を包んだ布の上に横たわる不気味な形状をしたセメントの塊。死という宿命を反転させようとする荒川が見つめた死がそこにあります。2007年には、それまで行方不明だった大型作品3点の修復が完了しました。本展では、それら3作品の大阪での初公開を含め、1958年から渡米直前にかけて制作された20点の初期立体作品が全国の美術館から集まります。

今回の展示作品は、巨大な木製の棺のような箱にセメントの塊が横たわるもので、作者が渡米する際に知人らに預けたものの、保管状態が悪いため劣化してしまったため、修復後の展示となったそうです。講師の森田恒之先生は実際に作品の修復を行った方です。いくつか印象に残った話をピックアップしましょう。(聞き覚えのため、発言内容とは厳密には異なる場合もありますのでご容赦を)
■修復に作者の意見は必要か?
 作者が存命中の場合、作者が修復したほうが良いのでは?という意見がある。この作品に関しても荒川修作氏は存命だが(2010年5月19日に亡くなられました。ご冥福をお祈りします)、既に50年ほど前の作品であり、作者であっても再構築や再作成となる危険がある。作者本人であっても、製作当時の感覚のままではないのだから、第三者が客観的な修復を行った方が良い。
■どこまで修復するのか?
現代の作品は、その劣化を含めて製作しているものもあると思われるが、経年変化した素材などはどこまで修復するのか?
これは難しい問題だが、実際にどの時点を保存するのかの判断は修復者が行うしかない部分もある。例えば、パフォーマンスアート的な作品の場合、そのパフォーマンスを映像に残そうが、それが作品自体の適切な保存とは言えないのである。
・今回は以下の判断で修復されたそうです。
 「木箱」 ベニヤが吸湿してバラバラになった部分はニカワで圧着して修復。
 「布」 素材自体が生かせるものは、釘による錆を電気化学反応で還元除去した後、チュール記事に接着剤で貼り付けて保護する。
 →本来はレース生地などを保護する手法を逆手にとって、レース様の生地で布を保護するそうです。
 また、素材が破損・汚損していて修復不可の場合は、代替品と交換する。今回はアセテート(人絹)だったが、時代とともに同一の素材が手に入らないこともあり、今回は退色していない部分の色に合せて化学繊維で交換したとか。
 「木屑」 製作当時はどこにでもあったが、現代ではなかなか手に入らなくなっている。今回は現在でもカンナ屑の出る工法をとっているところから入手したそう。
というように、修復といっても奥深いものなのだなあ、と非常に勉強になりました。この講演を聴いてから作品を観たら、修復の苦労ともども感慨深いものでした。

さて、ルノワール展のほうは、うーん個人的にあんまりルノワールが好きじゃないのかも…。美しいとは思ったんですがね。まあ、展示は工夫されているし、解説文も多いので音声ガイド(松坂慶子)は必要なかったかも。
そうそう、B2ではコレクション展もやってます。会田誠の「滝の絵」は6月から公開製作で仕上げるそうな。ちょっと見てみたい。