【2006/06/25(日)】第55回東西四大学合唱演奏会@京都コンサートホール大ホール

maru20042006-06-25


おそらく十数年ぶりに聴く通称「東西四連」です。意図的かはともかく、大阪府合唱祭が同日夕方に大学合唱団の出番をぶつけてきたようで、集客はどんなもんかな?と思ったら全く影響なく大入りでした。入場料は2500円、1500円、1000円の3ランク。まあここは支持母体のOB会や父兄も沢山来るのでこれでも入るんでしょうね。

17時30分開演で、まずはエール交歓から、あらー人数減りましたね。前に聴いたのが90年代初頭の合唱全盛期の終わりぐらいで、当時は100名オンステなんてのも珍しくなかったので、それに比べるとだいぶ寂しい。ためしに単独ステージのオンステを舞台上の実数でカウントしたら、ワグネル33名、KGグリー21名、ワセグリ54名、同グリ23名でした。合同は数えてないけど、単純合計で131名。(この人数だから京都コンサートでも開催できるんですね、昔はフェスじゃないと物理的に乗れなかったですよね)

さて、演奏はエール、単独2団、15分インタミ、単独2団、20分インタミ、合同という終演が21時近い3時間超のコンサート。プログラムは以下の通りです。

慶應義塾ワグネルソサィエティ男声合唱団 「ジプシーの歌」
作曲:A・ドヴォルジャーク 
指揮:畑中良輔 ピアノ:谷池 重紬子
関西学院グリークラブ 「ドイツロマン派の夕べ」
指揮:太田 務
早稲田大学グリークラブ 「季節へのまなざし」
作詞:伊藤 海彦 作曲:荻久保 和明 
指揮:山田 和樹
同志社グリークラブ 「いつからか野に立つて」
詩:高見 順 作曲:木下 牧子
指揮:中村 雅夫
■四大学合同演奏 男声合唱とパーカッションのための「饗宴の歌」(委嘱初演)
訳詩:金関寿夫 作曲:信長 貴富
指揮:伊東 恵司 パーカッション:小川真由

さて、単独演奏に関しては、まず結論。完全に東高西低!そして今回の演奏会を表すならば『ヤマカズと平井堅でしょう。往年の各団体の演奏レベルを想像する方には20〜30点かもしれませんが、昨今の大学合唱のレベルから考えると、まあ総合で60点くらいはあげても良いかなあ、と思えます。2500円とまでは行かないけれど1500円の価値は十分ありました。

まずワグネルは、選曲からして昔と変わってない感じですね、歌そのものはちょっと頼りないのですが、まあギリ及第点。ソリストが遠めに見たら髭の濃さと奥目がまさに平井堅(笑)。ちょっとしくじったりしてましたが、彼は他を含めたソリストの中では一番声が出てました。中盤盛り上がったところで終わったと勘違いした数十名の観客が拍手してしまって微妙な感じでしたが、演奏後には結構拍手が起こってましたよ。続く関学グリーは、うーん、演奏というか指揮というか、ロマン派の音はしてましたし、空気感というか雰囲気はまずまず良かったんですが、惜しむらくは音が違うのがねー何とかならないものかなあ、という感じ。バリトンソリストは良かったんだけど、所々ありえない音が聞こえたのが……。
で、問題の早稲グリです。実はエール聴いた段階で薄々気付いていたんですよね。馬鹿っぽいぞ、と。私は途中で声をあげて笑いそうになるのをこらえましたが、荻久保信奉者が聴いたらぶち切れるような爆演でした。まず、何が面白いって、山田和樹氏の指揮。東京の早慶での演奏を聴いた友人によると、ほとんど振らない感じで学生はよくわかってない感じだったし、意図が見えない。みたいな感想だったので、どんなもんかなあ?と思っていたら、今回はだいぶ指示して振ってましたね。指揮の問題というより、歌い手の問題でアインザッツが合わないとか、歌い急いでしまう部分はあったものの、おおむね良好。
いったいどこが爆演だったのか言葉で説明するのは難しく、映像見てもらうのが一番分かりやすいのですが、今回の山田さんの指揮は「きせまな」をオーケストラを指揮するように振って、まるでコラージュのように遊んでしまったように見えます。ピアノに対する要求は非常に繊細で、楽曲全体を通して緊張感が緩まず、面白いんです。ただ、曲の世界観にとらわれることがなく自由過ぎて、オマージュを超えてふざけてるように思った人もいるかも。例えば、一曲目「ひらく」の一発目の盛り上がりの場所ありますよね、あそこでいきなり左エルボーを突き上げる指揮。(ここでまず爆笑)あとは全体で5回くらい現れた右手人差し指で真上に突き上げる往年のハルクホーガン状態。(イッチバーン!)歌いまわしの部分でも子音を強烈に強調させたり、「ゆめみる」のオンオンオンのところは肩から揺れる歌唱を挑発するように鼓舞したりとどめが終盤♪氷のように〜♪の後、♪人はゆめみる〜♪の直前。ピアノパートの演奏時に何が起こったと思います?『シューシュー』と摩擦音を合唱に出させたんですよ!?ああっ!氷溶かしてるよこいつら! もうほとんどギャグですよ、人によっては冒涜かも?(笑)

案の定、演奏後の会場からは「あんな子音は合唱じゃない!」、「やりすぎだ!」という声も周囲から聞かれましたし、曲の精度や解釈でも好みは分かれるでしょうが、圧倒的に面白かった!のは事実。いやー度肝抜かれました。愉快だったなあ。

んで、単独ステージ最後は同グリ。うーん?申し訳ないですけど、木下作品は音を正確に出すってのが命題ですよね。あと選曲としてどうなんでしょう?演奏からは曲そのものが良いのか判断できなかったのですが、もう少し考えた方が良いんじゃないかな? 演奏後にOBのやらせブラボーが響き渡ってましたが、そこまでの好演じゃないでしょう。現役カワイソー。

ここまでで既に19時半を回り、2時間が経過。結構しんどいなあと思いつつも、一応メインの委嘱を聞かないとねー。そうそう、作曲者の信長さんが来場してましたよ、招待客お馴染みの位置に座っていたのですぐ分かりました。インタミ中に楽譜にサイン求められたりしてたけど、相変わらず地味な人でした。そういえば単独は3ステから聴いてたようですが、まんべんなく拍手していて偉いなあと感心。あの同グリに拍手を送れるのはある意味人徳でしょう。
さて「饗宴の歌」ですが、詩はアメリカインディアンの異なる部族のテキストで5編ありますが、曲は大きく分けて3つからなっています。パーカッションが効果的で、1曲目は頭と終わりにモノローグが入って舞台劇のようでした。この曲ではキタナーポという歌詞が印象的で、信長フレーズも出てきてました。2曲目があんまり印象になくて、最後の3曲目は、パーカッションに加えて合唱メンバーが鳥の声のホイッスルやリコーダー、ギターなども演奏でして一気に盛り上がっていきます。どこかのブログでゲーム音楽のようだと書いている人がいたけれど、これはあれですよ。リバーダンスだ!ケルトっぽいようなプリミティブな部分を揺さぶるような音楽。長いと思ってたら案外あっけなく終わってしまいましたが、会場は盛り上がってました。伊東さんのアンコールは信長さん編曲の「みかんの花咲く丘」をパーカスアレンジ付きで。オーダチェンジして締めは4団でお馴染みアンコールですが、やっぱウ・ボイとかイマイチだったのがねー。早稲田はここでもバカでした(笑)。

終演は21時近くで、グッタリでしたが、総括すると、やっぱり早稲田がいたからこの公演が成立したんじゃないでしょうか?技術的な部分はもちろん不満なこともありますが、従来のグリーファンが喜ぶグリー路線をぶち壊して見せたという良さがあったと思います。グリーって歌い手も客も予定調和みたいな部分があって、様式美を求める人にとっては関学同志社の演奏は良かったでしょうが、結局のところ、何を歌っても観客は結局ライチャリしか聴いてないみたいなところがあるでしょう?その点、アホ丸出しでもハイパーな面白さでしたし、これをスタンドプレイだと言える余力は大学合唱には無いので、今後他の団体も含め、良い演奏って何なのか考えるといいんじゃないかなあ、なんて思いました。
さて、最近行ったなかでは満足度が高い演奏会でしたが、最後に不満のコーナー。

・知的障害を持った方が観客におり、演奏中ずっと断続的に声が聞こえたがあれはどうなんでしょう?
・曲間の咳き込みや咳払いが異様に多かった。ガサガサ音などノイズも最近行った中ではワースト1!
・雨で、ここは傘たてが無いのでホール持込だが、場内で床に置くように放送があったものの係員がチェックしないので演奏中にバタバタ倒れていた。やはり京都コンサートホールはレベルが低い。フェスやシンフォではありえない。
・拍手のタイミングが総じて早い。ピアノや指揮が終わってないのに拍手やブラボーが聞こえるのは興ざめ。特に「きせまな」の時の、最後のピアノ左手が鳴っている間に拍手が始まって、それに覆い被さるようにブラボーが聞こえたのには失望した。この曲ってこうなることが多いんですが、ブラボーやってる人って曲を知ってるんでしょう?何で待てないのかなあ?ピアノが消えて、指揮者が棒を下ろして振り返ってから盛大な拍手なりブラボーしたらいいのに……。ガッカリですよ。