石塚 真一『岳 −みんなの山−』

maru20042006-08-20


何年か前までは毎日のように漫画雑誌を買って読んでいたのですが、買うことに縛られるのが嫌で止めてしまいました。その結果、生活には何も影響無かったし、追われるように読むのもシンドイので、今は単行本が出てから本屋で適当に選んで購入ってのがほとんどですが、一応気になって読んでいるのがこれ。今連載されているのは隔月刊の「ビッグコミックオリジナル増刊号」という雑誌ですが、今週からビッグコミックオリジナル本誌のほうでも連載スタートしたようです。たしか元々は本誌で読みきりで始まって人気が出て、オリジナル増刊で連載だったと思うけど……。(現在の情報は公式HPを参照のこと)

基本は各話読みきり、北アルプスでボランティアの山岳救助を行う島崎三歩の活動を描いており、例えば救助のエピソードでは毎回救助がうまくいってHAPPY!ということもなく、滑落、雪崩、遭難の恐ろしさ、山で亡くなるとはどういうことか?という厳しい現実も描いていますが、どこか救いや山の素晴らしさを感じさせる内容で、三歩の過去が分かるエピソードや山岳救助隊の活動そのものの現実なども含まれており、非常に読み応えがあります。

ただね、私はこの作品を読むとちょっといたたまれない気持になるんですよねー。
登場人物のキャラ設定は偏ってないし、現実的な要素のバランスも非常に良いので、リアルな感覚とコミックとしての虚構の世界がうまく出来ているんですが、なにせ三歩がいい奴過ぎて(笑)。あと、性善説といったらよいのかな、最新話に出てくる老女にしても、行くところがなくて病院の待合で毎日婆さん友達と会ってる、という設定なんだけど、「病気でもないのに病院に集まる年寄り」ってのは一時期すごく批判されたでしょう?でもこの作品での扱いをみたら「行き場所がない老人の楽しみの場所として仕方ない」という印象を持つんですよね、これは表現上は意図的なものではないし、是非についても論ずる気はないけれど、やっぱり社会人で、ある程度いろんな経験をすると「性悪説」で考えざるを得ない部分てあって、例えば、人員を「切ったり」する時には、どこかで自分を納得させていかないと人情だけではやっていけない訳ですよ。でもね、この作品は、そんな考えをちょっとぐらつかせるようなところがありますね。自分が酷い奴に思えてきて、読んでたら「俺はきっとろくな死に方しないだろうなあ」とか思いますもん。(まあ、私は最終的には考え方変わらないのでいいんですけど……(笑))

んで、そんな感想はさておき、大人の読み手を満足させる作品ですので一読をお勧めします。

岳 (1) (ビッグコミックス)

小学館
石塚 真一

このアイテムの詳細を見る

岳 (2) (ビッグコミックス)

小学館
石塚 真一

このアイテムの詳細を見る