【2009年05月02日(土)】静岡県立美術館・浜松美術館合同企画「石田徹也展と静岡県ゆかりの画家」@浜松市美術館

なんとなく気になって行ってきました浜松へ。泊まってもよかったけど目的は美術館だから日帰り。朝7時半の浜松に停車するひかり号で出発。

1時間半ほどで到着、9:03の定刻通りです。事前にチェックしていた遠鉄バスの時刻表をプリントアウトしておきました。これで迷いません。美術館は浜松駅からバスで6分くらい?130円です。

美術館は9時半にオープンなので、沢山の人が並んでいると思いきや、誰もいねーでやんの(笑)。

石畳は不思議な文様

おなじみ「飛べなくなった人」がポスターに使用されています

開場5分前でも撮り放題、散歩の人しか通りません。

この告知ポスターは販売もしていました(200円)、中吊りサイズは150円。

ぼんやり入り口で待っていると開場。入場料は大人600円、大高300円、小中は無料。しかも同一料金で浜松城天守閣の入場料金もセット可能!安っ!
展示は1階が石田徹也作品、2階が静岡県ゆかりの画家展となっていて、石田作品はスケッチブックなども含めると70点超!1995年から2004年までの全時代を網羅しています。そもそも私はちょっと懐疑的というか、メディアで取り上げられる彼のイメージが「器用に生きられなかった人のイコン」みたいになってるのが胡散臭いなあと思っていて、特にNHKでしたか?どこかの教授が宗教のように入れ込んでいるのなど気持ち悪いと感じていたので、それじゃあ現物を見てみよう!となったのです。ちなみに彼の作品は公式HPのギャラリーでほとんどが公開されています。
開館したての美術館の展示スペースに入ると、無造作と言ってもいいように作品が並んでいます。時代順に並んでいるので分かりやすいですね。最初に展示されている「居酒屋発」「ビアガーデン発」など何だか諧謔的 ( ユーモラス ) で、ほんぼのとした感情が生まれます。 第6回グラフィックアート『ひとつぼ展』グランプリ受賞の「みのむしの睡眠」などは、ブルーの発色の美しさに惹かれます。眠る男のネクタイの柄に使われた群青色に引き込まれました。1996年作の「飛べなくなった人」はあまりにも有名ですが、予想以上に大きい作品が多いですし、書き込みの緻密さに驚かされます。彼自身とも言われる男性の表情から判断されるような虚ろな寂しさというよりも、あくまでネタとして描かれているように感じました。それは毎日広告デザイン賞奨励賞受賞の「トヨタ自動車イプサム』」のイラストを見ても一目瞭然。別に悲惨な感じはしません。コンビニの店内を緻密に書き込んだものも悲壮感なし。とても気に入ったのが1997年作「クラゲの夢」ベッドに眠る男が水底を思わせる青い背景で描かれ、レースのような細かいクラゲに包まれて眠るさまは静謐な美しさ。この辺りの年代の作品から明らかに技術的な向上が分かるのですが、1999年雑誌Numberの挿絵の「あしたのジョー」を思わせる作品など、面白さも失われていません。次第に作風も変化し、建物など構造物と一体化したモチーフは無くなりますが、消防士がクレーン車で救いにくる2000年の作品など、縦2m近い大きなものですが、いわれてみたら「暗い」とは思うけれど、別に悲惨なイメージは湧きませんでした。まあ、初期の作品の頃よりは技術が向上しているし、テーマ選択の難しさはあったろうけど、「最後は破滅」という感じよりは、新しい作品だから当然ながら「発色や絵の美しさ」の方が勝っていると思います。もしも彼が亡くならずに、将来新しいテーマや作風を獲得していたら、きっと「苦しい時代」だったと言うかもしれないけれど、「絵をみた瞬間涙が止まりませんでした」「石田さん、あなたは私です」「友達になれていただろうに」「天国で一番はじめに会いたい」とかホントに虫唾が走るんですよね。勝手に故人(自分)をおまえの理解者にするな!と言いたい。そりゃ宗教だろうが!
展示室の横の小さな部屋には彼の写真と子供時代に書いたポスターがあって、メッセージをカードに書いて提出できるようになっていたんだけど、これは作品を管理されているご家族にはいいと思うけれど、まあ亡くなっちゃった人への思いを書いてもねー、どもならん。
ということで、実物の絵をみたことで今まで抱いていた誤った「石田徹也」像が払拭されたような気がします。好きになりました。お近くの方、是非行って下さい。お勧めします。画集で見るより現物見たほうが圧倒的にいいですよ。
グッズ類は、練馬区立美術館「石田徹也―僕たちの自画像―」展の図録1500円、美術の窓(2008年11月号)1600円、絵はがき(初期の作品中心で8種類)1枚150円、8枚セット1000円、本展のポスター大200円(上のほうの画像のもの)、中吊りサイズ150円でした。

なお、「静岡県ゆかりの画家展」は駆け足でさっと見たのですが、野島青茲の「宵」「診察室」が良かった。目が特徴的でちょっとペコちゃん風でイラストっぽいんだけれど、昭和の空気感がする作風。大きな作品なので今回見られて良かった。それから、秋野不矩の作品も良い。インドに魅せられた日本画家なんだけど、土や火、水といったテーマをインドの灼熱の空気を感じさせるゆらぎ、というのかな、引き込まれました。去年に京都国立近代美術館で「生誕100年記念 秋野不矩展」があったのかあ、行けばよかったー。洋画では川村清雄の巨岩海浜図あたりがなかなか。これ、両方見ても600円てのは超お得!

企画展
  静岡県立美術館・浜松美術館合同企画
  「石田徹也展と静岡県ゆかりの画家」

■会場 浜松市美術館
■会期 平成21年4月18日(土)〜平成21年5月17日(日)
    開館時間 午前9時30分〜午後5時
■観覧料
 大人  600円
 大学生・高校生・高齢者(70歳以上) 300円
 小中生 無料

石田徹也
 焼津市出身の画家・石田徹也は、鋭い感性で現代社会の息苦しさを表現し、将来を、嘱望されながらも31歳の若さで世を去りました。
 多くの作品に登場する、うつろな目をした人物を見ているうちに、私たちは日常うまく折り合いをつけている自分自身の内面と対峙せざるをえなくなります。見る者に強い印象を与える石田の作品は、「石田徹也悲しみのキャンパス」展(静岡県立美術館、2007年)や各種報道媒体で紹介され、現在多くの人々に共感され、支持されています。
 今回は、静岡県立美術館の収蔵品を中心に約70点を紹介します。細部に至るまで驚くほど緻密な作品群を、ぜひ実際にご覧下さい。

ということで、再びバスに乗って浜松駅方面へ。

京都あたりでもあるけれど、バスの接近サイン表示です。近代的なのでちょっとビックリ!

浜松駅の手前の中心市街地で降車すると、有名な旧松菱デパート(2001年倒産)が見えてきます。浜松の駅前には遠鉄百貨店があるんだけど、昔の市街地ってどこも苦戦してるんですよね、建物自体は綺麗だし、さっさと再建すりゃいいような気もするけど、たしか地権者と揉めて頓挫したんですよねー。しかし浜松駅から徒歩5分ほどの一等地なのにこんな状態で放置ってのはきついなあ。