【2009年04月29日(水・祝)】インシデンタル・アフェアーズ うつろいゆく日常性の美学「現代アートを楽しむための17の扉」@サントリーミュージアム[天保山]

天保山に到着したのは夕方5時前で、そろそろ日も傾きだす時間。




入場料はチラシの割引券を使って1,000円から100円引になりました。

インシデンタル(incidental)とは、「偶発的な」と「とるに足りない」などの意味を持ちます。
日常生活の中で私たちを取り巻く物事は、刻一刻と変化しています。その変化や偶発性をうつろいゆく美として捉えることで、普段の何気ない事柄が新たな美意識として甦ります。
本展では、この「インシデンタル」という言葉をキーワードに、国内外で活躍する現代アーティスト17名の作品を通して、現代の新しい美意識を探り、私たちの日常的な感覚の中に潜む新たな価値観や感覚を呼び起こします。
 
■会期  2009年3月7日(土)〜5月10日(日)
■休館日  毎週月曜日(但し、3月30日、4月6日、4月27日、5月4日は開催)
■開館時間  10:30〜19:30(最終入場は19:00) 
■出品作家
フランシス・アリス、トーマス・デマンド、東恩納裕一、アニッシュ・カプーア、木村友紀、ウドムサック・クリサナミス、宮島達男、トニー・アウスラー、エリザベス・ペイトン、ミシェル・ロブナー、佐伯洋江、榊原澄人、さわひらき田中功起、ウォルフガング・ティルマンス、横井七菜、横溝静

この会場は5階から入って4階に降りる2フロアなんですが、映像ものや大掛かりなインスタレーションの展示作品の流れが非常に良かった、いやー素晴らしいです。会期は5/10(日)までと残り僅かですが、お時間のある方は是非行ってみて下さい。

印象に残ったものをいくつか振り返ると、まず会場に入ると壁も床も真っ白なスペースにウォルフガング・ティルマンスの作品。写真撮影の技法らしいのですが、ゆらめく水流のような曲線が印象的。国立国際美術館の所蔵だったのか…。佐伯洋江は病的な細密画が大きな余白のボードに描かれていて、なんだか引き込まれる。フランシス・アリスは絵画作品が会場の通路や壁面に点在するように展示してあり、それぞれがとても印象深かった。榊原澄人の「浮楼」は日常の暮らしを人生に見立てて、画面上で無限にループする映像作品。歩いている少女が老婆になったり、画面の各ブロックを順に追うと人生が無限に繰り返されるのが不思議で何となく恐いような感覚も起こります。田中功起のバケツやモップなど日用品を使ったインスタレーションは、作品そのものは何てことは無いのだが、壁面のガラスの向こうには夕焼けの大阪港が!この展示は良かった。5階から4階へ降りると展示スペースの入り口で係員から注意があって、次の宮島達男の「MEGA DEATH」の説明でした。

25メートルを越す壁面に1800個以上のブルーのLEDが数字をカウントダウンしていて、人間の生命を象徴。センサーが設置されていて、その場所を通ると室内が真っ暗になり、死の静寂(メガ・デス=巨大な死)が起こる。その後、ふたたび生命が起こるようにLEDが点灯しはじめる、という作品。ここでは直線ではなく3方の壁面で展示されていましたが、展示スペースに入ったら思わず「おおっ」と声がもれそうになる壮大で美しい作品。無機的なライトが不規則に点灯している様は確かに生命のカウントダウンのようで、突然起こるMEGA DEATHには、ただ立ち尽くすしかなく、永遠のような暗闇の中で観客はただ待つしかないのですが、暗闇の中で弱弱しくも点灯を始めるブルーのカウンタは感動的でした。
この作品のインパクトがあまりにも強烈だったため、残りの作品は若干見劣りしてしまったのですが横溝静の写真作品はなかなか面白いコンセプトです。被写体は一定時間窓をあけて外を向いて立つだけ、協力者はアーティストに連絡し、直接会うことはない、後で写真を送り、公開不可なら言ってくれ、という変わった関係で、その距離感と実際の作品が興味深かったです。それと最後に展示していた、さわひらきの映像作品は良かった。小さな木馬たちが、こぢんまりとした部屋の中を旅するという詩情的な風景を三面の画面で映した繊細な作品。この展示スペースの壁面にもフランシス・アリスの絵画が照明に照らされて一枚展示されていて、それがまたとっても印象的。
うーむ本当に素晴らしい展示でした。図録は800円で、コミックくらいのサイズのコンパクトなもの。図録をチェックすると展示スペースがもう少しあったら他にも作品が持ってこれたようなんですが、これはこれで充分でしたね。なお、図録はGW中に売り切れたようです。
見終わるとちょうど閉館時間、表はすっかり真っ暗です。